家族信託の注意点-民法と家族信託の関係

◯ 民法と信託法

家族信託とは、信託法に依拠する仕組みです。信託法は平成18年の大きな改正を経て、親族内での利便性が大幅に向上しました。信託法とは、民法との対比において「特別法」と呼ばれています。この性質によって、例えば民法と信託法において重複する事由がある場合、信託法の規定を優先することになります。

これに関連して、いわゆる生前対策として利用される遺言や成年後見制度との関係について見ていきたいと思います。

 

◯ 遺言と家族信託

遺言は、まさに財産の円滑な承継のために利用される制度です。そして家族信託もまた、同様の目的のために利用することができます。ここで、お客様からよくご質問を受ける2点についてご紹介したいと思います。

 

①どっちがいいの?

一概には言えません。ご本人の想いを実現するために、いずれかが適している場合もありますし、併用をご提案することもあります。認知症対策を希望されるお客様や、財産を誰に相続させるかという点に重きを置くお客様もいます。ご本人、ひいてはご家族皆様の想いをお聞きして、専門家が最善のご提案を致します。

 

②両方利用したら、どっちが優先されるの?

双方の制度は、いずれも生前対策として総合的な検討が必要になるものですが、例として2つのパターンを想定したいと思います。

 

・遺言を作成した後に、家族信託契約を実施した場合

→遺言には民法上、「撤回みなし」の規定があります。遺言を作成した後、その内容と抵触する法律行為(この場合、家族信託)をした場合は、その抵触部分については遺言を撤回したものとみなされます。つまり、この場合は家族信託契約が優先されることとなります。

遺言を作成した後に、家族信託契約を実施した場合

 

・家族信託契約を実施した後に、遺言を作成した場合

→家族信託契約を締結し、その効力が発生すると、信託した財産は「信託財産」となります。これは本人固有の財産から抜け出し、受託者の名義となり、さらには受託者固有の財産でもなく、独立した財産(いわゆる信託財産)となります。つまり、信託した時点で本人固有の財産でない以上、その後に遺言を作成したとしても、信託した財産について効力は及びません。

家族信託契約を実施した後に、遺言を作成した場合

◯ 成年後見制度と家族信託

従来、財産を管理する制度として知られていた成年後見制度ですが、家族信託の利用により、その財産管理をより柔軟に実施することができます。

一方で、巷間、成年後見制度を家族信託で代用できると言われることもありますが、両制度の差を正確に知ることで、成年後見制度と併用することが最善である場合もあります。

 

・家族信託の柔軟性 

成年後見人と比較して、家族信託の受託者には、その必要な権限を契約時に設定することで、信託財産の管理・運用・処分について、その目的に沿った柔軟な実施が可能になります。

一方で、成年後見人の場合、家庭裁判所や後見監督人関与の下、本人のために必要である合理的な理由が無ければ認められないことがあります。例えば投機的な運用であったり、親族への贈与などは困難です。

 

・成年後見制度ならではの特徴

家族信託には無い、成年後見制度の特徴として、身上監護権があります。

これは本人の健康状態や生活環境に配慮し、施設の入居契約や医療機関とのやり取り、介護保険関係の手続きなどを行うものです。家族信託の受託者は、あくまで信託された財産を受託しているわけですから、「受託者」としてはできないことになります。もちろん、一般的にはご親族の方が代わりに手続きをしている現状もありますから、身上監護権のために成年後見制度を利用するか否かについても、ご家族の環境・判断によるでしょう。

 

◯ 総合的な生前対策の検討を

一重に生前対策と言っても、上記のとおり、家族信託・遺言・成年後見と様々です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご家族に最も適した選択が必要になりますので、専門家へ相談されて実行することが肝要です。

 

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