信託を活用できるケース-事業承継対策

◯ 中小企業オーナーの現実

日本企業における後継者の不在率は60%を超え、その後継者不在による廃業は年間約7万社と言われています。その理由は様々ですが、想定する後継者が親族であれ外部であれ、M&Aだけでなく事業承継を支える法制度の整備は急務です。

 

◯ 従来の事業承継対策

事業承継に関して、抱える課題は千差万別です。

株式という財産の処遇、経営権の処遇、承継する後継者の選択など、様々な悩みを持たれています。従来からの対策としては、株式の贈与や売買があります。但し、これらのデメリットとして、後継者へ完全に名義が渡ってしまいますので、贈与に伴う贈与税、売買に伴う買取資金、さらにはその後継者が将来の代表者として不適格であった場合、渡した株式を取り戻すのは困難であるなどの点が挙げられます。

また、遺言を利用する方法もありますが、これはあくまで相続発生後の承継者を決めるものであり、本人の認知症等による判断能力の低下によって議決権の行使ができなくなるなどのリスクに対応したものではありません。

その他、会社法上の種類株式を利用して、例えば拒否権付株式などの対策を講じることありますが、これらも株主総会や定款変更、登記による公示の必要性があり、また現在の経営者が積極的に経営に参加できない、相続発生後の対策には至らないなど、やはり一長一短と言えます。

 

◯ 事業承継対策としての家族信託

(事例1:後継者として長男へ経営権を移したいが、現在株価が高く、さらに長男の育成中でもあるため、自身が元気な内は完全には任せられない。)

オーナーである父親(委託者兼受益者)が、自身が持つ自社株を長男(受託者)に信託します。同時に指図権者を設定し、これを父親とします。

その結果、株式の名義は長男となる一方で、議決権を行使する際は、指図権者たる父親の指図に従って受託者たる長男が行使することになります。そして将来、父親の判断能力が低下した際は指図権を消滅させ、指図を受けることなく長男が議決権を行使でき、さらに父親が死亡した際は、信託を終了させ、長男が株式を完全な所有権として承継することができます。

事業承継対策としての家族信託

(事例2:会社の株価が低く、すぐにでも後継者である長男に株式を渡したいが、現時点では長男に経営を任せることはできない。)

オーナーである父親が、自身が持つ自社株を長男に贈与します。同時に、贈与を受けた長男(委託者兼受益者)が、父親(受託者)に対して株式を信託します。

その結果、株式の生前贈与を済ませつつ、これまでと変わらず受託者たる父親が議決権を行使することができます。将来的に、長男に経営を任せられると判断した段階で、当事者の合意に基づき信託を終了させ、長男の完全な所有者として株式が帰属し、事業承継が完成します。

事業承継対策としての家族信託

◯ 始める際の注意点

冒頭に申し上げたとおり、中小企業オーナーの抱える悩みは千差万別であり、その対策もまた多岐にわたりながらも一長一短です。故に、様々な対策と比較検討しながら、自らの会社に適した対策を実行することが大切です。

 

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