家族信託の注意点-受益者連続型信託とは?

◯受益者連続型信託とは?

家族信託は、委託者(財産管理をお願いする人)と受託者(財産管理を託される人)が受益者(信託により利益を受ける人)のために信託を契約を締結することにより始まります。当初は委託者=受益者(自益信託といいます)となることが多いのですが、当初の受益者が亡くなった場合に、他の者が新たに受益者となる定めがある信託を「受益者連続型信託」といいます。

遺言では、「次の世代」の承継までしか決めることができませんが、家族信託では、「次の世代」だけでなく、「更に次の世代」までの承継を決めることができます。

具体例で考えてみましょう。

相談者Aさん(82才)は妻Bさん(78才)と自宅で暮らしています。Aさん夫妻には子供がいません(【図39-1】参照)。Aさんには弟がおり、弟の子Dを昔から我が子のように可愛がってきました。Aさんの自宅の敷地は代々相続したもので、同じ敷地内にアパートも所有しています。Aさんは最近持病が悪化し、自らの相続について考えるようになりました。自分に万が一のことがあった場合には、妻に不動産が相続されるのは構わないのですが、妻が亡くなった後に自分の不動産が妻の兄弟(あるいは甥姪)に相続されてしまうのは何とか避けられないかと考えています。

そこで、Aさんのケースでは、Aさんを委託者を、受託者は甥のDさん、当初受益者はAさん、二次受益者Bさん、帰属権利者をDさんとする家族信託契約を締結しました(【図39-2】参照)。これにより、Aさんが認知症となった後もしくは亡くなった後でもDさんに財産管理をしてもらうことができます。また、Aさん、Bさんが亡くなった後はBさんの兄弟ではなく、Dさんに財産を承継させることが可能となります。

この点、Aさんが遺言でBさんに財産を遺す、Bさんが遺言でDさんに財産を遺すとすれば上記と同じようなことを実現することができます(Aさんの遺言で、財産をBさんに遺し、Bさん亡き後はDさんに遺すとすることはできません。)。しかし、遺言はいつでも撤回をすることはできるため、Aさんが亡くなった後にBさんがDさんに遺すとした遺言を書き直してしまうかもしれません。また、遺言はあくまで相続が発生した後に効力が生じますので、生前にDさんに財産管理を承継させることはできません。

[図39ー1]

[図39ー2]

 

◯受益者連続型信託の注意点

①期間制限

受益者連続型信託には期間の制限があります。

信託法第91条により、「 当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する 」とされています。

つまり、家族信託を開始してから30年が経った後に新たに受益権を取得した受益者が亡くなることにより信託は終了します。

 

②相続税

受益者連続型信託の場合、受益者の死亡により受益権が移転する場合、新たに受益者となる者に対して相続税が課税されることになります(相基通9の3-1(1))。

例えば、上記のケースの場合、BさんやDさんが受益権を取得した場合に相続税が課税されることになります。

 

③遺留分減殺請求

受益者連続型信託による受益権の承継であっても、遺留分減殺請求の対象とならないわけではありません。遺留分の取扱いについては、現時点では最高裁の判例がなく不明瞭な点もありますので、信託をはじめる前に必ず専門家に相談しましょう。

 

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