信託を活用できるケース-相続対策

○ 相続対策としての家族信託

相続対策と一言で表現しても、これは様々な視点から検討すべき分野です。

例えば相続税を始めとした税金対策、代々引き継いできた本家の遺産承継対策、子どものいない夫婦の相続対策、将来の紛争を予防するための争続対策など、枚挙にいとまがないと言えるでしょう。そこで、以下に代表的な相続対策としての家族信託の利用方法とそのメリットをご紹介します。これらの基本型を元に、ご家族のニーズに叶う設計をしていきます。

 

○ 相続対策としての家族信託

(事例1:子どものいない夫婦が考える家族信託)

長男は代々本家を引き継いできましたが、妻と二人の生活で子どもがいません。

よって将来死亡したときの推定相続人は、妻と弟の2人のみです。長男の意向としては、自分が死亡したときは本家を含めた財産一切を妻に渡したい。一方で、妻の死亡後は妻の親族側に財産が渡ってしまうのは避けたく、最終的には直系たる弟とその子らに引き継がせたいと考えています。

相続対策としての家族信託

相続において財産を渡す相手を指定したいとき、従来は遺言の作成が主流でした。

ところが遺言を作成すると、長男の遺言で決められるのはあくまで「長男の財産を誰に渡すか」に留まります。つまりこの遺言によって妻に本家を渡すことができても、妻から自分の弟へ引き継がせることまでは決めておけないのです。もちろん、妻自身も遺言を作成し、夫の弟に渡す旨の遺言を作成することもできますが、それは妻自身の意思で決めることであり、そもそも遺言の書き換えをされれればそれまでです。

そこで、このニーズに叶うスキームとして家族信託が利用できます。

複数のパターンが考えられますが、例えば長男(委託者)が本家や金銭を信託財産として、弟の子(受託者)に信託します。そして受益者を当初は本人とし、本人の死亡後は妻、妻の死亡後は弟…のように段階的に承継させ、弟が死亡した際は信託が終了し、完全な所有権として弟の子に帰属させるよう設定します。

相続対策としての家族信託

このスキームによって、必要なときに必要な人が、本家の利益を享受し、長男の思い描く承継が実現させることができます。

注意点としては、このようないわゆる後継ぎ遺贈型の家族信託は、信託法の定めにおいて30年の期間制限があります。また、遺留分の手当や相続税の想定など、考慮すべき点も様々ございますので、検討の際は専門家へのご相談をおすすめします。

 

(事例2:争う相続を未然に防ぐ家族信託)

母親は、亡くなった夫の財産を承継し、自宅不動産や金融資産を有しています。

子は3人おり、それぞれ家庭を持ちながらも兄弟仲良くしています。母親は一人暮らしですが、徐々に身体の衰えを感じており、将来的には自宅を売却し、施設に入る可能性もあります。現在は定期的に近くに住む長男が顔を出しに来てくれており、長男に身の回りの世話や最低限の財産管理をお願いしています。

家族内では、母親の死後は自宅不動産を含め財産の大半を長男が相続し、その他金融資産を弟2人が相続する旨、全員の意見が一致しています。一方で、自宅不動産は母親の生前に売却するか否か、そして売却の際に認知症になっていれば成年後見制度を利用する可能性もあります。

将来想定されるスムーズな売却と遺産承継を、今のうちに決めておくことができるでしょうか。

今回のニーズは、家族で合意した遺産承継の実現と、認知症対策です。解決策として、母親(委託者)が、自宅不動産と金銭の一部を信託財産として、長男(受託者)に信託します。受益者を母自身として、母が存命の間その利益を享受します。そして信託の期間を母の死亡とすることで、信託を終了させ、残余の財産は、家族で決めた割合で帰属させるよう設定しておきます。

争う相続を未然に防ぐ家族信託

このスキームで家族信託を利用することにより、家族で決めた承継方法を事前にきめることができ、さらには母親の判断能力低下後も、成年後見人の選任手続を経ること無く、長男が受託者として不動産を売却し、母親の施設入居費用などに充てることができます。

注意点としては、母親の施設の入居契約など身上監護に関する事務については、受託者の権限ではありません。必要に応じて、任意後見契約なども並行して検討すると良いでしょう。

 

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