認知症対策として利用することが多い家族信託ですが、その効力はいつから発生するのでしょうか。
認知症対策と聞くと、「認知症を発症してから」(=判断能力がなくなってから)家族信託が開始されると誤解されている方もおりますが、家族信託は「信託契約と同時」にその効力が発生します。つまり、信託契約と同時にということは、契約は元気なうち(判断能力があるうち)にしか締結できないので、家族信託の効力は「元気なうち」に発生することを意味します。後見制度は、判断能力が低下・喪失してから開始されますが、家族信託は元気なうちから開始するのです。
認知症になってから家族信託が開始するという条項を入れて契約を締結することも法的には有効ですが、登記手続や金融機関での手続ができなくなってしまう可能性があるので、実務上はこのような定めをするのは避けた方がよいとされています。
元気なうちに開始してしまうということが、家族信託をはじめるタイミングの判断を難しくすることになります。認知症による財産凍結は避けたいので今すぐ信託を始めたいと思う一方で、今すぐ(=元気なうちに)受託者である子供に信託財産の管理権限が移ってしまうのは少し早い気が・・・ということで、もう少し時間が経ってから信託を開始しようという判断に至ることがよくあります。
一方で、すでに判断能力が低下してしまった方のご家族からの相談も非常に増えています。判断能力が低下したからといって家族信託や遺言などの生前対策が必ずしも不可能となってしまうわけではありませんが、すでに対策ができない状態となってしまっているケースも多く見受けられます。
元気なうちにしか信託を利用できないというの理解できても、人間元気なうちは信託などの対策のことなど考えたくはないというのが本音だと思います。
一概にいつ開始するのがよいとは言えませんが、一度家族会議を行って家族信託や遺言等について専門家を交えて話し合っておくことをおすすめします。
司法書士 永井悠一朗
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- 【家族信託コラム】家族信託はいつから始まるの? - 2019年6月30日