信託の種類

● 信託は大きく分けて2種類ある

信託には様々な分類の仕方がありますが、家族信託を理解する上で重要な分類方法を理解しておきましょう。

信託は大きくわけて、「商事信託」「民事信託」に分類することができます。

商事信託とは、財産の管理を行う受託者が営業として信託を引き受ける形態をいいます。「営業として」とは、報酬を得て、不特定多数の者から、反復継続的に信託を引き受けることをいいます。つまり、信託会社や信託銀行など信託を商売として行う場合を指します。商事信託を行うためには、内閣総理大臣の認可が必要となり、信託業法による規制受けることになります。商事信託は、さらに管理型信託と運用型信託に分類することができます。

これに対して、民事信託とは、受託者が営利を目的とせず信託を引き受ける形態をいいます。民事信託を行う場合には、商事信託とは異なり、内閣総理大臣の認可は必要ではなく、信託業法の適用を受けることはありません。民事信託のうち、家族が受託者として家族の財産管理などを行う形態を「家族信託」と呼んでいます。障害を抱える子の「親亡き後問題」や夫(妻)亡き後の妻(夫)の生活の支援を行う「福祉型信託」も民事信託の1つです。

2007年に信託法が改正されたことに伴い、信託の自由度が格段に高まり、営利を目的としなければ、認可がない個人や法人でも受託者となることが可能となりました。

 

● 商事信託と民事信託のメリット・デメリット

商事信託には、受託者がいなくても利用できる、長期に安定的な信託ができるなどのメリットがある一方で、信託できる財産が原則金銭に限られる(収益を生まない不動産や株式は対象外の場合がほとんど)、イニシャルコスト・ランニングコストが高額などのデメリットがあります。

また、民事信託には、家族で自由で柔軟な財産管理・運用・承継ができる、信託できる財産が多様、商事信託に比べて費用がかからないなどのメリットがある一方で、受託者のなり手がいないと利用できない、監督機能が弱いなどのデメリットがあります。

 

● 信託銀行の「遺言信託」とは何が違うの?

信託銀行が提供している「遺言信託」サービスは、信託銀行が遺言書の作成、遺言書の保管、遺言書の執行を行うもので、信託法上の信託ではありません。法律的には、ただの「遺言」ということになります。あくまで亡くなった後の財産の承継先を決めているだけですので、生前の認知症対策(財産管理対策)を行うことはできません。とても紛らわしい名称ですが、「家族信託」とは全く関係がありません(なお、信託法上は、遺言で信託を設定する「遺言信託」といいます)。

 

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