家族信託の注意点- 損益通算の禁止の規定について

◯損益通算とは?

損益通算とは、一定の所得においてマイナスが生じていた場合、他の所得からマイナス分を差し引くことをいいます。

例えば、不動産所得が△200万円、事業所得が300万円であった場合、 事業所得300万円から不動産所得200万円を差し引くことをいいます。これにより合計所得は100万円となり、所得税の課税対象は100万円となります。

所得税の金額の計算上損失が生じた場合に、損益通算の対象となる所得は次の所得です。

  1. 不動産所得
  2. 事業所得
  3. 譲渡所得
  4. 山林所得

 

◯家族信託では損益通算ができない?

家族信託は非常に便利な制度ですが、利用にあたっては何点か注意点があります。

その一つが、所得税の計算上損益通算ができない、ということです。

これは、 租税特別措置法41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)という法律で、信託から生じた不動産所得の損失については、生じなかったものとみなされ、他の不動産所得の黒字から差し引くことができない、とされているからです。

具体的には

  1. 信託財産とした不動産から生じた損失を、信託財産以外から生じた所得と損益通算することはできないことになります。
  2. 「損失については生じなかったもの」となりますので、純損失の繰越し控除を行うこともきません。
  3. 信託契約が複数にわたる場合(不動産ごとに別々の信託契約となっている場合)、異なる信託契約の信託不動産との損失通算はできません。同じ信託契約で信託財産とされている不動産の損失については損益通算が可能です。

ということになります。

大規模修繕の予定がある不動産を信託する際などは特に注意が必要となります。信託を開始する前に必ず税理士の先生と相談しましょう。

家族信託は相続や成年後見など法的な検討事項が多いので、法律の専門家である司法書士や弁護士の先生に相談することが多いと思います。しかし、相続税や所得税などの税務の面の検討もとても大切ですので、司法書士(弁護士)と税理士が協力して家族信託をサポートするのが望ましいでしょうか。弊社でも税務面のチェックのため家族信託に精通する税理士の先生と協力しています。

 

◯ 元気なうちに対策をはじめよう

残念ながら親や家族が既に認知症になってから弊社にご相談にいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。 認知症対策として有効な家族信託も、認知症になってしまうと利用することができません。なぜなら、家族信託も通常「契約」によって開始するからです。判断能力がない状態で契約したとしても契約は無効となってしまいますので、家族信託も無効になってしまいます。

認知症対策をはじめとする生前対策は「元気なうち」にしかすることができません

早めに対策を開始することをオススメします。

 

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