他の手続きとの比較 – 遺言

家族信託と遺言の違いは何でしょうか。今回は両者を比較してみましょう。

 

1.要式の違い

遺言は、自筆証書遺言という形式であれば、自分一人で作ることができます。一方で家族信託は自分一人で作ることはできず、受託者と委託者の間で契約を結ぶことになります。一人で作ることができるメリットは、いつでも、自分だけで撤回や作り直しができることです。一方で契約のメリットは、勝手に撤回や変更されるリスクを防ぐことができることです。

 

2.二次相続について定めること

遺言は自分が死んだ後のことについて定めておくことができますが、家族信託は自分が死んだ後、さらに財産を引き継いだ人が死んだ後(二次相続などといいます)についても定めておくことができます。例えば、自分が死んだら妻へ財産を承継させ、妻が死んだら甥・姪に承継させるといったことも決めておくことが可能です。

 

3.いつから始まるかの違い

遺言はその人の死後に効力が発生します。つまり、遺言では、生きている間のことは決めておくことはできません。

家族信託は、亡くなった後のことはもちろん、生きている間のことも決めておくことができます。つまり、家族信託は遺言の代わりになる機能も備えています。

 

4.家族信託と遺言とどちらが優先するのか

家族信託と遺言の両方を用いた場合、どちらが優先されるのでしょうか。答えは、信託です。なぜなら、遺言は民法という法律(一般法)により、家族信託は信託法という法律(特別法)により定められています。基本的には、特別法は一般法に優先するため、特別法である信託の方が有効となります。例えば、すでに信託財産に含まれている財産について遺言で帰属先を決めたとしても、その部分については、遺言は無効です。

 

5.信託銀行の遺言信託

信託と聞くと信託銀行を思い浮かべる方もいると思います。しかし、信託銀行が行なっている「遺言信託」は、信託ではありません。遺言信託は、信託銀行が遺言を保管するという商品の名称です。したがって、もし生前の認知症対策やスムーズな財産承継を考えているならば、信託銀行の遺言信託を使ってそれらの対策を行うことはできないことに注意が必要です。

 

6.家族信託と遺言の両方を備えること

家族信託は遺言の代わりとなる機能をもっていますが、多くのケースにおいて、信託財産以外の財産については公正証書遺言を用いて決めておきます。家族信託と遺言の両方を備えることで、将来に備えることができるでしょう。

 

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