◯ 自益信託と他益信託
信託とは、財産を持っている人(委託者)が、利益を受ける人(受益者)のために、信頼できる相手(受託者)に、金銭や不動産を託し、受託者がその財産を管理・運用・処分する制度です。つまり、基本的な登場人物は、「委託者」「受託者」「受益者」の3者です。この内、委託者と受益者の立場に着目して、2つの類型が存在します。
1つ目は、「自益信託」です。以下の図のように、委託者と受益者が同一人物で構成されています。
2つ目は、「他益信託」です。以下の図のように、委託者と受益者が異なった人物で構成されています。
つまり、信託を設定することによって、利益を受ける権利(=受益権)が他人に移るか否かが2つ分けるポイントになります。
自益信託は、財産の管理・処分権が受託者に移りますが、利益を受ける権利が自分にありますので、この場合は信託をしても贈与税や不動産取得税は発生しません。
*自益信託であっても、不動産を信託した場合、登記申請による登録免許税は発生します。
一方、他益信託は、信託をすることによって利益を受ける権利が他人(この場合、孫)に移りますので、贈与税や不動産取得税が発生します。
良し悪しの問題ではありませんが、例えば認知症対策などの信託であれば、自益信託から始めることによって、本人の判断能力低下後も本人を保護していくことができます。信託を組成する際は、それぞれの特性を理解した上でスキームを検討していく必要があります。