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家族信託と生命保険信託の違いとは?

2020-01-22

 家族信託とともに、生命保険会社が提供する「生命保険信託」というサービスの利用が増えています。文字通り、生命保険と信託を掛け合わせたサービスで、通常の生命保険では得られない様々なメリットがあります。家族信託のウィークポイントをカバーする機能があることから、弊社でも家族信託を利用するお客様に対して、生命保険信託を勧めることがよくあります。

 

  •  生命保険信託とは

 生命保険信託とは、通常の生命保険契約と同時に信託契約を締結することにより、死亡保険金の管理や交付を信託銀行などに任せておくサービスをいいます。信託契約により、「生命保険金を受け取る権利」を信託銀行などに信託しておくことになります。これにより、信託銀行などが死亡保険金の受取人(受託者)となり、契約者の方が事前に定めたご家族(受益者)などに対して、事前に定めた金銭が定期的に交付されていくことになります。一般的に、生命保険金は受取人(受益者)が「一括」で受け取ることになりますので、受取人(受益者)としたいご家族が財産をきちんと管理できるかどうか不安な場合、生命保険信託はとても有用な制度です。

 

  •  生命保険信託の特徴

 生命保険信託には、次のような特徴があります。

①生命保険金の「管理」や「交付」を信託銀行などにお願いすることができる

 通常の生命保険の場合、契約者の方が亡くなった際には、高額な生命保険金が保険会社から一括で受取人(受益者)であるご家族に支払いがなされることになります。しかし、受取人(受益者)の方がご自身で財産の管理を行うのが難しい場合、保険金を直接受け取った後に適切な管理が行っていけるのか、という問題があります。例えば、受取人(受益者)が未成年のお子様や障がいをお持ちのお子様の場合、受取人(受益者)が認知症の方である場合などが想定されます。

 このような場合、生命保険信託を利用することにより、一旦生命保険金は信託銀行などに支払われることになります。その後、あらかじめ定められた金額が、信託銀行などから受取人(受益者)の方に定期的に交付されることになります。例えば、「毎月10万円を生活費として口座に振り込む」と定めておけば、信託銀行などから毎月そのとおりに交付がなされていくことになります。

 生命保険金の交付方法には、あらかじめ交付する金額、頻度、期間などを定めておく「定例交付」と、急な出費に対応するための「随時交付」というものがあります。定例交付により日常の生活費を定期的に交付することができます。定例交付の金額は、例えば、大学卒業までは月8万円、社会人になったら月10万円のように、受取人(受益者)の年齢やライフステージに応じて変更する設定をしておくことができます。また、随時交付により医療費・介護費・学費・相続税などの臨時の支出に対応するための金銭を交付することができます。最終的には、余った生命保険金を慈善団体などに寄付をする設定にすることも可能です。

 生命保険金の交付の際の手続きに不安がある場合には、「指図権者」を事前に定めておくことにより、受取人(受益者)の代わりに諸手続きを指図権者が行うことが可能です。指図権者には、親族だけでなく、後見人、弁護士法人、司法書士法人などを選ぶことが可能です。

 

②最初の保険金受取人(第一受益者)が亡くなった後の、次の受取人(第二受益者)を定めておくことができる

 通常の生命保険の場合、契約者が亡くなり生命保険金が受取人(受益者)に支払われた後は、その金銭は「受取人(受益者)自身の財産」となります。したがって、それを何に使うのか、誰に残すのかは受取人(受益者)の方の自由ということになります。

 これに対して、生命保険信託では、最初の生命保険金の受取人(第一受益者)が亡くなった後は、次の受取人(第二受益者)に保険金を交付するように定めておくことができます。例えば、妻を第一受益者として毎月10万円ずつ交付がなされるように設定し、妻が亡くなった後は、第二受益者である子供に一括で交付することということが可能となります。

 

  •  生命保険信託の利用を検討すべきケースとは

 生命保険信託は、主に次のようなケースで効果的と言われています。

 

①ご家族の中に障がいのある方やひきこもりの方がいる

 ご家族の中に障がいをお持ちの方やひきこもりの方がいる場合、相続や生命保険で金銭を遺したとしても、その後の管理に不安を感じる方は多いでしょう。生命保険信託を利用すれば、信託銀行等に金銭を管理してもらいながら、適切な時期に適切な金銭の交付を受けることが可能となります。

 

②お子様がいないご夫婦

 お子様がいないご夫婦の場合、ご夫婦それぞれの財産は、いずれ夫(あるいは妻)の兄弟に相続されることになります。例えば、夫が先に亡くなり夫の金銭を妻が相続し、その後妻が亡くなると、夫の金銭は妻の兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっていれば甥・姪)に相続されることになります。

 これは、お子様がおらず、かつ、親も既に亡くなっている場合、財産は原則として兄弟に相続されるという規定が民法という法律にあるためです。配偶者に財産を遺すには良いとしても、その後配偶者の兄弟姉妹に財産が相続されてしまうことについては違和感を覚える方も多いでしょう。そこで、生命保険信託を利用し、配偶者を第一受益者、自分の兄弟(あるいは甥・姪)を第二受益者とすることにより、配偶者亡き後は、あらかじめ設定した自分の親族に金銭を遺すことができます。

 

  •  生命保険信託の注意点

 生命保険信託の注意点として、次のようなものが挙げられます。

①すべての生命保険会社で利用できるわけではない

 生命保険信託はすべての生命保険会社で利用できるわけではありません。現時点では、プルデンシャル生命保険株式会社、ソニー生命株式会社などでしか利用できません。

 

②費用がかかる

 生命保険信託は、通常の生命保険への加入の他に、「信託契約」を締結することが必要となります。したがって、信託契約時と信託開始後に信託銀行などに対して手数料がかかります。利用の際は注意しましょう。

 

③遺言や家族信託などを同時に検討する必要がある

 生命保険信託は、自分が亡くなった後の生命保険金という「金銭」を最初の受取人(第一受益者)や次の受取人(第二受益者)に遺していく仕組みです。対象はあくまで生命保険金とした「金銭」のみですので、不動産やその他の金融資産をどのように管理・承継していくのかについては、別途遺言や家族信託の利用を検討する必要があります。

 

  •  生命保険信託と家族信託

 生命保険信託と家族信託の主な違いとしては、下記の2点を挙げることができます。

まず、上記で述べたように生命保険信託の対象は「金銭」に限定されますが、家族信託の対象は、金銭には限定されません。よって、特に不動産の管理・承継については生命保険信託では対応ができませんので、家族信託を利用することになります。

 次に、生命保険信託は、信託銀行などの信託業の免許を持つ「法人」が受託者として財産管理を行うのに対して、家族信託は、家族などの「個人」が受益者となるケースがほとんどです。よって、信託が長期間に及ぶケースの場合(例えば、障がいをお持ちのお子様やひきこもりのお子様のために家族信託を利用するような場合)、家族信託のみを利用すると受託者が病気や事故などで財産管理ができなくなってしまうリスクが高まりますので、生命保険信託を同時に利用し「金銭」については信託銀行などに管理を任せることにより、安定的な信託を実現することが可能となります。

 

以上のように、生命保険信託には通常の生命保険では実現できない多くのメリットがあります。また、家族信託と併用することによりより安定した財産管理・財産承継が可能となります。一度利用を検討されていかがでしょうか。

家族信託と任意後見制度の違いとは?

2020-01-21

家族信託の相談やセミナーでよく質問を受けるのが、家族信託と任意後見の違いです。財産管理をお願いする人を事前に決めておけるという意味では似ている制度ですが、下記のような違いあります。

決めて①任意後見制度でとは、法定後見制度と異なり、事前にご家族を後見人に選任しておくことは可能ですが、後見人を監督する任意後見監督人という専門職(司法書士・弁護士など)が必ず選任されます。ご家族に財産管理を任せることができるという点においては家族信託と同様ですが、任意後見制度も成年後見制度の1つですので、裁判所の監督に服するという点で家族信託とは異なります。
 
②任意後見制度の場合(法定後見も同様です)、任意後見人の財産管理の対象は「全財産」となります。一方、家族信託における受託者の管理対象は「信託財産」(信託契約で定めた財産)のみとなります。追加信託により、信託財産は後ほど追加することが可能です。なお、家族信託の場合は、受託者が年金受給を行うことが現状できない関係で、厳密な意味で「全財産」を信託することはできません。信託契約時点の全財産を信託したとしても、その後親の口座に年金が振り込まれてしまうので、必要があれば適宜追加信託を行う必要があります。

③任意後見人の役割は、財産管理と身上監護にあります(法定後見人も同様です)。身上監護とは、本人の医療、介護、福祉などに関する法律行為を行うことをいいます。例えば、入院の際の手続きや法人ホーム入居の利用契約手続などがこれにあたります。一方、家族信託の受託者には身上監護の権限はありませんので、これらの手続きを代理する権限はありません。

④任意後見契約は、契約と同時に開始するのではなく、判断能力低下後に家庭裁判所に申し立てをすることにより開始します。一方、家族信託は信託契約と同時に開始します。

⑤任意後見制度では、司法書士・弁護士等の専門家を任意後見人に選任することが可能ですが、家族信託では、専門家を受託者として選ぶことはできません。

 

以上が主な相違点となります。

どちらを選択するのか、あるいは併用するのかは専門家に相談の上、慎重に決定しましょう。

【相続MEMO】 連載コラムVOL10.「『家族信託』と『遺言信託サービス』の違いは?」がアップされました。

2020-01-12

相続情報サイト「相続MEMO」で弊社元木が連載中のコラムVOL.10がアップされました。

今回のテーマは、「『家族信託』と『遺言信託サービス』の違いは?」です。

 

下記よりコラムを読むことができます。是非ご覧ください。

 

https://souzoku-memo.jp/interview/detail/id=662

【相続MEMO】 連載コラムVOL9.「あなたの信託は大丈夫?『危険な家族信託』の典型例」がアップされました。

2020-01-12

相続情報サイト「相続MEMO」で弊社元木が連載中のコラムVOL.9がアップされました。

今回のテーマは、「あなたの信託は大丈夫?『危険な家族信託』の典型例」です。

 

下記よりコラムを読むことができます。是非ご覧ください。

https://souzoku-memo.jp/interview/detail/id=657

【相続MEMO】 連載コラムVOL.8「『家族信託』を開始するまでの流れは?」がアップされました。

2019-10-27

相続情報サイト「相続MEMO」で弊社元木が連載中のコラムVOL.8がアップされました。

今回のテーマは、「『家族信託』を開始するまでの流れは?」です。

 

下記よりコラムを読むことができます。是非ご覧ください。

https://souzoku-memo.jp/inheritance/detail/id=587

【相続MEMO】 連載コラムVOL.7「今すぐ『家族信託』を検討すべき3つのケースとは?」がアップされました。

2019-10-19

相続情報サイト「相続MEMO」で弊社元木が連載中のコラムVOL.7がアップされました。

今回のテーマは、「今すぐ『家族信託』を検討すべき3つのケースとは?」です。

 

下記よりコラムを読むことができます。是非ご覧ください。

https://souzoku-memo.jp/inheritance/detail/id=585

【相続MEMO】 連載コラムVOL.6「『家族信託』の受託者になる前に知っておくべき3つの注意点」がアップされました。

2019-10-16

相続情報サイト「相続MEMO」で弊社元木が連載中のコラムVOL.6がアップされました。

今回のテーマは、「『家族信託』の受託者になる前に知っておくべき3つの注意点」です。

 

下記よりコラムを読むことができます。是非ご覧ください。

 

https://souzoku-memo.jp/inheritance/detail/id=582

【相続MEMO】 連載コラムVOL.5「家族信託が利用できない3つの典型ケース」がアップされました。

2019-10-13

相続情報サイト「相続MEMO」で弊社元木が連載中のコラムVOL.5がアップされました。

今回のテーマは、「家族信託が利用できない3つの典型ケース」です。

 

下記よりコラムを読むことができます。是非ご覧ください。

 

https://souzoku-memo.jp/inheritance/detail/id=580

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